95年前、海を渡ってきたスタインウェイ

昨日は、東京都立三田高校にてリサイタルでした。今年で5回目、ここ数年は連続してお招き頂いています。

毎年一回、PTA主催で学校関係者のために開催されるこのコンサート、「スタインウェイ コンサート」という名称に関して素敵なエピソードがあります。なんとこのピアノは95歳。大正12年にドイツから海を渡ってきたのですが、当時の生徒の保護者によって“三田高校の生徒達には、是非素晴らしい音色を聴きながら音楽を学んでほしい”と寄贈されたピアノなのです。(調べたところ、大正の頃の公務員の初任給(高等文官試験に合格した高等官の基本給)が75円ですが、このピアノは5000円だったそうです。) 戦争の時代もくぐり抜け、ずっと三田高校(前身は女学校でした。)の歴史を見守り続け、そして大切に受け継がれてきたピアノを、毎年特別な思いを持って弾かせていただいています。オーバーホールからずっと携わっていらっしゃるコンサートチューナーの村上武士氏が、今回も心を込めて整えて下さいました。

初めてこのピアノを弾かせて頂いた時、どうしても避けることができない経年による不具合などにより、色々と工夫しながらちょっと苦労して演奏したのを覚えています。でも、毎年弾かせていただくことで、このピアノが持つ素晴らしいキャラクターを発見し、そして今もなお響きが変化しているのを実感します。三田高校は音楽がとても盛んな学校で、ピアノを弾く生徒も多く普段は自由にピアノを弾いているそうなので、ピアノも喜んでいるのでしょう。毎年大田区にあるアプリコの大ホールにて、音楽を選択している生徒と吹奏楽部、管弦楽部でのベートーヴェンの交響曲第9番の演奏が目玉になっています。昨日のプログラムは、ショパン:エチュード全曲でした。

今回もお声をかけて下さった三田高校の校長、副校長をはじめ先生方、コンサート開催のためにご尽力下さったPTAのお母様方、ほんとうに有難うございました。

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