自筆譜が教えてくれること

普段、学生に「簡単に手に入るものは、簡単に手の内から逃げていくものだよ。」と話しているのですが、私自身インターネットの恩恵を受けているのは事実で、なかでも作曲家の自筆譜が閲覧できるサイトの存在は、昔国内外の図書館や博物館に足を運んでいたことを考えると、有難いと思うと同時に、なんとも巨匠達に申し訳ない気持ちにすらなります。作曲家自身の手によって書かれた楽譜は、数百年の時空を超えてその真意や感情を現代に伝えてくれる唯一の扉です。楽譜をじっくり読んでいると、迷いや修正の跡、そして筆圧や勢いから作曲家のその時の心情や息づかい、そして身体から溢れる熱量が伝わってきます。また、バッハやベートーヴェンなど、後世に出版される校訂版と違い、自筆譜には最小限の指示しかありません。そこから音楽をどう読み解くかの演奏者の能力、創造力、想像力、即興力が問われるため、心を澄まして向き合うことになります。一番充実した時間です。

L.v.Beethoven Klavier Sonate Nr.32 c-moll Op.111 2.Satz

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