先日、勤務する取手松陽高校音楽科で芸術鑑賞会が開催されました。第1回の昨年も大いに盛り上がった実技指導講師陣によるコンサートに加えて、今回はタカギクラヴィア株式会社代表取締役社長・ピアノプロデューサー、技術師・高木 裕氏、オルガニスト・室住素子氏をお迎えしてのレクチャーと、この秋に音楽科が購入した電子オルガン(ロジャースのインスパイア)の弾き初めコンサートという、豪華三本立て!のイベントになりました。
学年入れ替えで、コンサートと同時進行で行われたのは、これまで7000以上のコンサートやレコーディングを手がけてきた高木氏の講座でした。氏が語る言葉に、生徒達は終始ハッとさせられていた様子で、こんな質問してみたい〜!とはりきっていた生徒達も、静かに(緊張していたのかもしれませんね。かわいい。笑) 目を見開いて耳を傾けていました。チェンバロの時代を経て、なぜ現代のピアノの原型であるピアノフォルテが発明されたのか。物理的な視点から考える「響き」「発音」について。産業革命やゴールドラッシュ、世界大戦など歴史的な出来事が、ピアノ製作や現在のコンサートスタイルなどにも大きな影響をもたらしてきたこと。さらにその先の日本への影響について、など。高木氏はこれまで、ショパン存命中の1843年プレイエル、ラフマニノフが晩年所有していた1932年製のスタインウェイ D-273182、ホロヴィッツ愛用のスタインウェイ《CD75》などの修復を手がけていますが、ヴィンテージピアノが私達に教えてくれることについて、また、修復を開始するまで約二年に及ぶ調査、研究により発見してきたこと等々… ピアノの歴史のみならず音楽業界の歴史など興味深い話で、あっという間の90分でした。特に、全ての楽器演奏にも共通する、P(弱音)こそ音楽家の真価がわかるということ、楽器そのものが持つ音色という意味では、ピアノは決して「楽器の王様」とはいえない。だから、豊かな音色と表現への飽くなき欲求を持ち続けていってほしい、という言葉は、とても強く胸に響いたようです。
午後は、室住氏のレクチャーコンサートを堪能しました。まさか学校でオルガンの演奏を聴くことができる日が来るとは想像もしていませんでした。(しかも室住氏の演奏で!)バッハのトッカータとフーガの第一音目が響いた瞬間、不覚にも涙が溢れてしまいました。講座では、オルガンの構造から、発音の仕組みはもとより、音色を選ぶスイッチであるストップの仕組みについてなど、初心者でも分かりやすいように詳しく説明していただきました。そして、生徒の代表による実際にオルガン演奏を体験するコーナーでは、オルガン奏者にとっての腕の見せどころで、とても苦労をする音色作りを体験。また、鍵盤楽器といってもピアノとは異なる、リコーダーで音を出すのと同じ原理といえるオルガンにおける奏法に初めは戸惑いつつも、室井氏のアドバイスによりみるみる変化し、音楽的、奏法の発見の連続に生徒達の表情も輝いていました。私自身、副科で学んだオルガンから得たことはとても大きく、(思えば、特に好きな作曲家は、オルガンの名手でもあったことに気づかされます。)これから、きっと生徒達も様々な発見と学びを経験していくに違いありません。
今は情報が簡単に手に入る時代ですが、目の前で貴重なお話や演奏にじっくりと耳を傾けることができるのは、何にも代え難い体験ですね。とてもいい表情をしていた生徒達を見て、これからじっくりと学びを積み重ねていき、音楽のみならず、その先の広い世界へ繋がっていってほしいと思いました。私にとっても、とても幸せな時間でした。
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