日本歌曲への思いを新たに。

先日、ソプラノの中馬美和さんとのコンサートを終演しました。午後のひととき、ごく限られたお客様との素敵な時間でした。ピアニストでもある中馬さんと共に、響きのイメージを確認しながらの音楽作りは貴いものでした。中馬さんが今回選りすぐった ”今、伝えたい“ 作品による、邦人作曲家を中心としたプログラム。第二次世界大戦の前後を生きた、髙田三郎、大中恩、團伊玖磨、中田喜直、武満徹、そして千原英喜、木下牧子、木村哲郎、とそれぞれの作品の個性や世界観は十人十色でありながら、プログラムを聴き終えた時、たしかに『いま、生きている』という一本に貫くテーマが浮かび上がりました。

大仰な表現とは無縁で、内省的かつ凝縮されたリリシズムというのか、歌とピアノが共に繊細なレースを丁寧に編んでいくような音楽作りが求められる歌曲の世界に、今回あらためて魅了されました。それにしても、それぞれの作品の旋律と詩の融合、美しさはさることながら、ピアノパートの素晴らしさには感動することしきりでした。特に中田作品の独特なピアニシズムは、自身が卓越したピアニストだったことも関係するかもしれません。

歳を重ねるごとに、さらに深く心に沁み入る歌曲の世界。探求していきたいです。

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